底辺ネットライターが思うこと

思うことをひたすら書くだけ

独り立ち

独り暮らしを始めた。

生まれて初めての独り暮らし。あれが面倒だこれが面倒だともっと騒ぐ羽目になるかと思っていたけれど、驚くほど快適な生活が送れている。私にとって、家族がいるという煩わしさの方が、家事をする煩わしさよりも上回っていた。掃除も、洗濯も、全く苦にならない。

 

新生活、というものは、もっと胸が高鳴るものかと思っていた。実際、結婚したときの新居で初めて眠った日は、もっとドキドキしていたように思う。

まるで、この部屋は、以前から私のために用意されていて、ここに住むことが決められていたかのように快適で、何もドキドキしない。もうずっと昔から住んでいた家のようだ。今まで住んでいた家と、全く似た部分なんてないのに。こんな部屋があったのかと、嬉しく思う。

何より嬉しいのは、この部屋は、私の文章がお金に変わった結果であるということ。

私が必死に頑張ってきた姿を見守り続けてくれた人たちは皆、「お城だね」と言った。

新しくもない1Kの部屋。お城のような豪華なものではないし、置いてある家具や家電は機能的でメカニックなものが目立つから、城というより基地だ、と、私は思っていた。

けれど、「お城だね」と言われて、とても嬉しくなった。

文章の城を築き上げた。私はこれまで、こんなにも何かを成し遂げたことはなかったように思う。

これまで会社に属していていただいていたお金と、全然違う。私の意思が、誠心が、正義が、善意が、悪意が、あらゆるものが染みこんでいるお金。それで買った、家具や家電。私は結婚したときに家具家電を選んだ時と、全く違う選び方をした。

華美でなくてもいい。機能的で、できれば鉄よりも木でできていて。そうした希望を叶えてくれるのなら、少しぐらい多めにお金を出してもいい。だって、これからずっと付き合っていくのだから。でも、そんなにお金持ちではないから、しっかりと吟味してそれなりのものを。

家電は、必要最低限でいい。テレビはまだいらない。でも大きなプリンターは欲しい。たくさん紙を印刷しても歪まない、インクも綺麗に出る、頼もしいやつ。

ずっと憧れていた長机も買った。180センチもある大きな長机。紙をたくさん広げておきたかった。書きたいときに書きたいことが書けるように。

すごく悩んだけれど、化粧台も買った。私が最も苦手とする片付けを少しでもきちんとできるようにしようと考えた時、最も散らかりやすいのが化粧品だと考えた。私はできるだけきちんと化粧をするようにしていて、それは誰にも馬鹿にされないために。毎日使う細々とした物を毎日きちんと片付けるには、片付けやすい箱があればいいと思った。

ホームセンターで偶然出会った大きめのクワズイモも買った。やっぱり、植物は欲しい。以前大事にしていたクワズイモは、元夫にちょん切られて枯れてしまった。今度こそ大切にしようと、枕元に置いた。

朝は日の光と、小さな電車の音で目が覚める。クワズイモの葉の上に葉水が光るのが見える。少しして、長机に向かって座る。日記を書く。昨日一日がどんな日だったか、思い出してひたすら綴る。時間が許されれば1時間ぐらい没頭して書き続けている。何ページ書いても書くことが尽きない。

周りはとても静かだ。住宅街の中、ほとんど騒音がない。ドアと窓を閉めれば、とても静かで、心まで鎮まるようで。

 

実家にも、結婚していた時の家にも、私はいつも何か不満を持っていた。あれが足りないこれが足りないと買い足してはみるものの、満たされることはなかった。今、とても満ち足りている。ただ書いているというだけで。

こうして書けることは才能なのだと、ある人が言った。嬉しかった。けれど、悲しかった。言った本人ならわかると思うけれど。

まだ不完全な文章の城で、文章を書き散らす。こうしているだけで幸せなのに、どうしてそれを奪いに来る人がいるのだろうか。心の平穏を、奪わないでほしい。奪われるぐらいなら、私は。